本間とめ子さん [手蜘蛛絞り]
一番最初に紹介したいのは、有松鳴海絞りのルーツともいえる「手蜘蛛絞り」を得意とする本間とめ子さん。現在85歳。7歳から始め、絞り歴は78年。文句なしの大ベテランです。手蜘蛛絞りは、ほかの絞り方と違って下絵がありません。蜘蛛の形の大小や並び方を頭の中で組み立てながら、真っ白の布を手の感覚だけでひとつひとつ絞っていきます。
これはさぞ集中が肝要かと思いきや、本間さんは口も達者(笑)。無駄なく正確に手を動かしつつ、口のほうも止まらない。始終冗談も交えて周囲を笑わせる、有松鳴海きってのエンターテイナー。有松・鳴海絞会館や、そのほかいろんなところで、絞りの実演もこなします。
布を括る手の動きは小気味よく、力強く、到底85歳とは思えません。でも、60歳くらいが一番よく身体が動いたのだとか。世間一般では定年退職の年齢がピークだったと言い切る本間さんに、ただただ感嘆です。
数ある絞りの技術のなかでも、ひときわ難しい手蜘蛛絞り。いまこの手蜘蛛絞りができるのは、本間とめ子さん一人だけとなってしまいました。本間さんは絞りの教室を開いて、手蜘蛛絞りが後世に残るよう、教えるほうもがんばっています。

